2009-01-01から1年間の記事一覧

詩集『風来坊』を読む

岡崎武志さんより 、 詩集『風来坊』(岡崎武志・スムース文庫)をいただきました。掲載の許可をいただいたので、印象に残った詩篇をここに写させていただきます。 (3) いつからか 遠い人のことを おもうようになった 近い人は 遠い人よりも なお 遠い ど…

友人の手を借りて

友人が、最近広い部屋に引っ越したことを幸いに、まだ部屋に物を運び込む前におしかけ、製本作業が始まりました。20年前に猫のマルクを一緒に見送った友人だから、この非常識を許してくれてると思います。作業前に近所の居酒屋で飲んだので、紙切り落語家…

頌栄

稲のミルクが熟してくると しらんだそらを蔽うほどの群れは 必死の声を上げる頭をもたげた地上のかげは 犬稗も同然 つややかなまなこの死角に置かれる茶色に立ちのぼる唱和は石を投げる老人も ちまたの猫も ばらばらにして無数に広がり 集約しては 弧線にか…

今日を迎えられた幸い

私の日常は、一見文学とは遠いところにある。29歳の時に、一生の仕事と思い定めて就職した福祉授産施設で支援員になって11年目になる。 今朝は紙のファイルの組立てとつくだに屋の箱折りの采配に精力を傾け、昼からはクラブの企画で封筒利用の照る照る坊主づ…

昨晩完成しました

手製の詩集「二月十四日」を昨晩、一気呵成に仕上げました。その前日、ページ番号の打ち間違いやら、閉店時間を気にしながらのコピーで使えないものが出たりと、とても綴じるまでにはいたらず、げんなりした挙げ句「18日までにやればいいか」と思っていたの…

檸檬鶏片

食堂には 生まれた家の 戸棚のかおりがあった肝油と 花梨酒と 小麦粉が一袋 しまってある 水模様の磨り硝子の向こう側に手をのばす 湯気のたつレモンチキンはなぜ 昭和四十八年の 芳香を知っているのだろう 姉のスプーンは単調なライン 弟のスプーンは シャ…

*1253625243*うわの空 こうして書く生活が戻るとも思わず、パソコンもプリンターも身近に置かなくなっていたので、この数日はネットカフェとコンビニを行ったり来たり。おりしも『ネトゲ廃人』の広告が新聞に大きく載っており、朝に晩にぼさぼさのなりでネッ…

18ticket

ひとむかし 砂と戯れ飽きたころ きっぷがつれて行った先 岩船駅のホームの花壇 西大山の人家の裏 つららの並んだトイレ Y・Hの二段ベッド モヨロ貝塚 熱川無人泉 陽の落ちた笹川流れ 真夏の民家地帯 秋月の水道栓 終点は 時刻表には 乗ってない。 時をとめ…

いつの間にか

日記を始めて半年、ブログ内に新旧併せて詩が三十編ほどあることが確認できました。 夏に善行堂に伺ったおり、秋の古本まつりまでには詩編を紙にまとめると、善行先生に宣言しておきながら、この生徒(?)連休前まで全然手をつけておりませんでした。ちょう…

ダークフルーツケーキ

夜寒のステンレスボウル に 蛍光灯は似つかわしい 関東州から世を渡り 父はジャワへ母は芦屋へ後の世にはつけもの石となる係累を持ち 父は しらず 嗜眠のくせがついた 泡立ての音も 鼾にまぎれる ねむりの間に間に 炭を焼き 人を教え 農夫を全うする 日用の…

多田千香子さんの新刊

『パリ砂糖菓子の日々 ルコルドンブルーで学んで』(文藝春秋社)の多田千香子さんが『おやつ新報へ、ようこそ。』(エンターブレイン)という新刊を17日に出されることを、多田さんのはてなの日記を通じて知りました。 『パリ砂糖菓子の日々』は題名はかわ…

うろ覚え

モロゾフ愛の詩は二回応募している。確か二回目の応募は昭和62年頃で何等かになったはずだが、大学に入って家から出ていたため、「モロゾフから白いプリンがまた来たけど食べちゃったよ」という親の報告と共に記憶から消去していたが・・・いったいどんな詩…

Monday

愛を信じないひとは やたらに身体を 探しまわる キャラメルの箱を 剥がすしぐさだ そんなに 何も もっていなかったか 陽が昇るのは まだか 瞼は消えて 重さだけ残る更新されていない メーターはまわりつづけ いじけた愚痴が マンホールに流れ込む 今日の水を…

細い将来しか 山峡に描けず 索漠とした 家に生まれ 手にしたものは 本しかなかった 長じては 粘土に彩られたあの街で 地縁もなく 生きていた日々 しゃべれば不興を買う 修羅のせいかつ史 貝のように生きて ざるのそこで 見つけたのは あの言葉だったろうか …

旅を終えて

高遠を離れ、伊那に戻ってきました。高遠も伊那も金物屋と昔ながらの洋品店が目につきます。驚いたのは伊那には駅四方に三軒書店の路面店があり、うち2軒は昔ながらの書店。この個人店がなくなるご時世に大健闘です。長野は読書をする人が多いと小学生の頃…

フリーペーパーを見る

はらぺこ広場の奥には公民館がひっそりあり、そこには「日和カフェ」がしつらえてあり、フリーペーパー展が。ちょうど松本クラフトフェアのフリーペーパーを制作しておられるご夫婦がおられたので話を聞いたところ、三ヶ月に一度、育児の合間をぬって出され…

祝祭

道でスズキコージさんの昨日のワークショップでできあがった動物達と行きあいました。御輿ねりのように街を歩き、最後に曼荼羅のようなフラッグはためく図書館前にみな引き揃い、そこは陽光まぶしい祝祭の場所に!インド音楽が鳴り響き、紙吹雪はしろく、暑…

高遠ブックフェスティバル二日目

昨日泊まったのは洋品店の三階からがホテルになっている面白いつくりの家庭的な雰囲気の宿でした。五千円しないのにトイレ、風呂別で広々したつくりでゆっくり休めました。さて、高遠につき北條ストアへ。パラディさんの棚から『鹿鳴集』(会津八一 創元社)…

本の家

本を置いてあるところがちょっと少ないせいもあってか、本の家は大盛況です。ここで『ことばはホウキ星』井坂洋子 主婦の友社と再会。 北條ストアもたくさん箱がならんで、大変混雑してました。多治見市のトムの庭さんも出店されていました。着いたのが遅か…

おお

図書館につくとスズキコージさんがワークショップの作品を作り終えて取材を受けておられました。そしてここでパンフレットを手にいれました。図書館はかわいらしい高校生がたむろしており懐かしい気持ちに。しかし所在なくしてても何だから本の家に向かうこ…

もてなしの心

バスターミナルでは永島敏行似のお兄さんがシャトルバスの券をにこやかに配ってくれていました。シャトルバスは豪華車両で、タダなのにこれまた精悍な案内の人つきで、車内が空き空きなのが気の毒なくらいです。案内人さんによると、何も考えずに乗った無料…

伊那市

窓辺から見える林檎に唾を飲み込みながらの道中、やっと伊那市に着きました。三時にシャトルバスが出るそうなので、初めての町を歩きます。失礼ながら伊那がこんな街中だとはちっとも知らなかった。岐阜は炎天でしたがこちらは風がやさしい。ブックス&カフ…

たどりつくか高遠

行こうかどうしようか迷っていた高遠行き。そして今は伊那市行きのバスの中です。チケットを発券してもらったのが11時30発の発車三分前。唯一の旅の指針であるチラシを人にやってしまったために、何も持たずで、果たしてこのバスがいいかどうかは分からない…

鈴木しづ子

職場には、たまに泊まり勤務があり、今日は寝が足りない。障がいを持つ利用者と日中は様々な仕事に取り組む。私の日常背景には結束機の轟音と台車の響きが欠かせない。今日は中国から来た書道バッグ30個入りの箱を検品するため作業場と倉庫を往復したが、30…

焼き鳥若竹

黒龍を楓のカウンターにのせて 火曜日の客は言葉すくなだったミイがあいさつにでる 医者の家を自ら出て 肴三昧を選んだ あっぱれなやつ おばさんの漬けた 特大の梅が口に転がる その甘苦さ 日々の傷を 止まり木でなめて 治したこともある 泥酔して川からあげ…

夏に会った文人(二)

くちなしや おうなのおよび ほのじろき 大学三年になって、近代文学のゼミに入ると同時に「天狼」に自動的に加入することになりました。句作には消極的だった私。覚えてるものは「夏草を蹴り飛ばしつつ野を行けり」というヤケクソ詠と上記の二首のみです。 …

夏に逢った文人(一)

あれは平成三年の夏頃だったろうか、名古屋の芸創センターで何か近代文学の集まりがあった。 指導教官にお茶出しにかりだされて、それまで客にお茶なんか煎れたこともない学生が四苦八苦して茶を出した相手は、温顔で、上着が窮屈そうな紳士だった。 教官が…

Thunder road

キールンで もうついていかないと 決めたのに 私のフレームは 白いフレームと かさなりあって倒れているつながれたチェーンは何の印なのだろう 花蓮から台北へ 加油!加油! 突撃する車をかわし ペダルは何万回漕がれたろうか 火炎樹の彼方の 天空は白い 清…

悪態

この 背中を見ながら 死を 考えている人もいる たとえば おいつめる何かがあって そのことで 頭がいっぱいでも あんたが いなくなったって 仕方がないのだ たとえば 執着したい何かを 手放すために この世から消えても 期待したようには 思い出されなんか し…

喫茶つくし

廃線の駅前 オシロイバナの種を踏む 身内に悩む女と くらしに悩む女が ならんでヤキソバををつついている 姉妹だからやさしくもなれず サイダーのように つぶやき、つぶやき すえた飯のような 午後がめぐる 金時5つ 客が現れ みるまに氷はつもる それをしお…