2013-01-01から1年間の記事一覧

さまざまなことを ひとつひとつ 転がしているのにも飽きて 永遠の塩で蓋をして 地に埋めて 枝を斜めにさしておく ばらばらこぼれる老いは そのうち皮になる さしのべた腕は 白い花に飾られ ふかみどりの葉を繁らせる すべてを忘れてしまうころに 誰かが皮を…

転がらない石を抱えて

半島の突端に 打ち寄せられた 忘れ形見から 蔓は伸びて 梅雨の雲を 招く 足裏の記憶で 道を辿れば 灯台は閉鎖されていた 釣り人の影に 満潮が重なる 寄る辺ないものが 集まる浜を ベランダから見下ろし 四方八方に 砕ける波を瞼におさめ ひとよは終わった テ…

飛来

ついに車の窓を 手で擦って 目を凝らす 突然の雪に 塞がれた夜道 弟が 娘が生まれた と知らせてきた 父に そっくりな声で 11時11分に生まれたのだと 四十を迎えても 昨日の夜道を まだ歩いていると 信じ いつまでも育ちきらないで 平気でいたけれど 抱き上げ…

街道筋

その土地は 嫁入りには小銭を撒くと聞いた 青白い 学校の友だちが生まれた 空の狭い町 本陣があった ところに 小学校がある 雪の校庭には 犬の足跡ばかり ここは もののはためく音が いつまでも、いつまでも 聞こえている あるものより ないものの多さを な…

新春騒動

正月は子規の『仰臥漫録』を読み、「臥して味わう」というテーマで何か書くことを思いついた。夏葉社さんの『冬の本』に天野祐吉が、谷内六郎の限定版の病床日記があると書いてたな…と普段は夕方にしか行かない県立図書館に出かけ、あれこれと本を読んでいた…