2012-01-01から1年間の記事一覧

ひめくり

すべて外して 今が終わることを念じ 踵をひきずった 家路糸も梯子も 空から降りてこない無口になって 薄いノートを 埋めた 遠い春 もうじき誰も いなくなる もらった 孔だらけの柑橘を 剥いて皿に並べたら 水気のない中身を だだ二人だけ 立ったまま 慈しむ…

「落葉降る下にて」から「寿福寺」まで

虚子記念館は、松林の公園近くの住宅街の中にあった。阪神の震災の跡ではないかと思われる取り壊しの跡や、陋屋がぽつぽつ残る川縁を歩く。昼食に訪れた喫茶店や、お茶を求めた駅前のスーパーでは、年配者が目についた。小倉ではコンビニでも居酒屋でもハン…

久女の句稿

小倉にある北九州文学館で杉田久女展が先月の25日まで開催されていた。久女については近年様々な研究本が出ているが、様々な句の生まれた縁ある土地に、まずは行ってみなくては、と思いたち、師走のある日、西に出かけた。車中では、岩波文庫から、復刻され…

森田愛子をたずねて

みくに龍翔館は、えちぜん鉄道三国駅の北東の坂道を登ったところにある。森田愛子と伊藤柏翠の展示は、二人の句の軸や、虚子の葉書などが並び、詳しい年譜も掲げてあった。ミーハーな動機ながら、実践女子専門学校時代にも、道行く人が振り返ったという森田…

虚子の小説を読む  ヒロインを辿る旅 三国

虚子が杉田久女を題材として書いた小説に「国子の手紙」という一篇がある。 「私」宛に優秀な句を寄せていた女性が、次第に常軌を逸した手紙を夥しく寄越すようになり、偏執的な振る舞いをみせるようになった後、精神の平衡を欠いて死んだと聞き「私」は、や…

遊覧船  

陸に抱き取られ いずこにも 往かれぬ古代湖 かつては、四方に溢れたというが その跡は砂に覆われた 三人・・二人・・七人・・ 五人・・・四人見習いの札をつけ 青年は家族写真を商売にしているといい 無愛想に 空を指す 誰かが 葦のかなたに 見た柱を 小船の…