2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

花首

そのかみの 真紅を忘れかね 窶れた唇の母たちは 午後の陽の庭で 篭にころりと集めた実を 蒸して叩き 黄金の油を絞る 子の髪を 梳きながら 落としてきた おごりの春などをおもい エナメルが剥げないまま 年老いて いよいよこれまでかと 削げ落ちる胸に 手を当…

あかり

小さい靴は 生乾きだったから 寝る前に 新聞紙を詰めた 長靴を履きたくない その一心で 雪を含んだ雲が 地を照らしている ふるさとを 美しいとは思えない 時を 誰もが一度は 迎えるのだろう 連山にかかる すばるは 変わり映えしない 時報のようだ けれど な…

初雪 怠けていたことを 後悔する 賭けなかったことを 悲しく思う 追えたかも しれぬことに 今更気がつく それも 時間に余りがあってこそ 行き先を、あきらめた そのことを それが 生きたすべて、ではない と あなたの書いた 一篇が 残された人々の 澄んだ歌…

ニューソング 娘に庇護され 息子を案じ 今や孫と猫に忙しいのだ 賢人といえども 世間を更新せず 人にも 酒にも 電化製品にも のめり込まない そんな 天上のお告げは 枯れた筆の看板くらいに 眺めればいいものを 崇め奉り 引用はつづく 毛布に包まれた苦言な…

『すごい本屋!』に行けなくて

2008年の暮れ、和歌山の山深くにある本屋、イハラハートショップの方の著書『すごい本屋!』に魅せられて、誰彼かまわず、人に読め読め強要し、行く機会もうかがっていたが、和歌山は岐阜からは遠く、なかなか機会は訪れないのだった。先月、たまたま京都に…

田舎の長女

「最近は母のほうが身体がつらいみたいでね、でも、おばあさんを自分でみるっていって無理しとるもんで、おばあさんのぼけにいちいちイライラするんやわ、またおばあさんが、実の娘を「おばあさん、おばあさん」呼んで、おやつを出すと、「わしはいいで、お…

道成寺 念仏を 細首に結わえつけ 揺籃の雪山から出でて 輝く果ての浜 倒れ伏せば 波は砂利を鳴らし 奏楽を耳に運ぶ 波を浴び 風を喰らい 長い髪を離さぬ 皺を忘れた女は 流れ寄るものを 火にくべては 客に膳を出し 子を寝かしつけ 唄で夜を呼ぶ つややかな …