2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

移動動物園

佐藤泰志。『海炭市叙景』が昨年の10月に文庫化されたことに続いて、この4月、小学舘文庫から『移動動物園』、河出文庫から『そこのみにて光輝く』が相次いで刊行された。 デビュー作だという『移動動物園』。主人公は内心を語らず、次々と見たものが投げ出…

手にしたものは本しかなかった

学生時代、古本屋に通うようになったきっかけは、幼い日に読んだ料理本や児童書を探すためだった。 小学生の頃に、父は故郷に転勤して、祖父母と同居が始まった。共稼ぎな上に田畑の世話も増え、何かと慌ただしく、核家族の小さな団欒は消え、料理の本とお菓…

甘露

今日の月 梅酒の瓶から つまみあげた拍子に しずくが 落ちてくるような ストーブの灯油が ゆっくり巡る音を 幾夜も聞き 綴じ紐をひっぱり 年少いゆえに 尽きてしまう言葉に 焦れていた 爪の 飢餓線がなくなり 不似合いな 年輪を巻きつけ 古い葉を繁らせ やわ…

無題

子どもが鈴生りの 小さなアパートが 楽園だったことは 遠い遠い昔 昭和51年 あの河のそばで 暮らせないと きっと親達は決断 したのだ 山奥に連れて 来られた姉弟の 肩身狭く生きた傷は いくつになっても 癒えはしないけれど 若き日の 親の歳を私たちは 揃っ…

新年度

4年程担当した仕事場を離れる―といっても別に仕事の内容は同じで、階下に移るという具合―にあたって昨日は引き継ぎをした。引き継ぐ方が、超ベテランなので特に心配もなく、こっちも古巣に戻るという立場なので、あまり不安もなく春を迎えることができた。 …