2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

空豆ばなし

西濃には「みょうがぼち」という小麦の厚い皮で空豆の餡を包み、みょうがの葉で巻いた郷土菓子がこの時期和菓子屋に並ぶ。郷土菓子のわりには、作り方を知る人は周りにおらず、西濃出身の親もうろ憶え、地元の人に聞くと、どうも大昔は家庭で作っていたらし…

小鳥峠

全山を 覆い尽す 一枚一枚にも 宿命がある 芽吹いたのち 広げた鶸色は 水無月にもなれば 吹きあがる屋根となり 藪蚊の棲む 薄い闇に 白い花を集め 再び 夏が現れた

捨てても増えるのは 仕方がない 生活も 思い出も 余計を詰め込んでも 恥じずそのくせ いつ 朽ち始めるのだろう、と いつからか 解を待っている 悔しい荷を背負い 家路を辿るは 毎度のことであり アメリカザリガニしか 棲まない 溝の時代は 酸欠ばかりで 美し…

収穫の季節にそなえての 準備が始まる 背の低い果樹園で 葉が15枚につき 花がひとつ 陽と水の味を 味わう前に 小さすぎる花は 几帳面な手で 摘まれてゆく 傍らの廃園では 薄緑の花が 枝に咲きほこる やがて来る季節には 小さな実は鈴なり 樹皮がいつか 芯か…

菜園

野菜苗が店頭に出るのを気にしていた年月があった。山の上の学校に勤めていた時には授業の一環に畑作があり、初夏になると、さつま芋の苗を多治見の街の苗屋にまで買いに出掛けていた。藁で縛っただけの苗の束は、ほどいて植え付けたすぐは、くったりして一…