収穫の季節にそなえての
準備が始まる
背の低い果樹園で


葉が15枚につき
花がひとつ


陽と水の味を
味わう前に
小さすぎる花は
几帳面な手で
摘まれてゆく


傍らの廃園では
薄緑の花が
枝に咲きほこる
やがて来る季節には
小さな実は鈴なり


樹皮がいつか
芯から朽ちて
土に還る日まで
狭い空に
葉を繁らせ
光を腕に抱える

すべては
その
花のために