2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

かつては誰もが織っていた

下鴨の古本市の帰り、ガケ書房の古本棚から徳廣睦子『手織りの着物』(1986筑摩書房)を手にいれた。『星を撒いた街』の作者が、家族からどう語られているのか興味があったからだ。 上林と妻、両親の姿が、身内贔屓ではない愛情をこめながらも、独特の距離か…

海浜

雲 縦横に光が 透けている 水飲み場に 手を置いて 熱を味わう 足裏をへこませ 可笑しさに、ほどけて うつむく ソーダ飴のような 匂いが湧き立ち 形も見えなくなれば 錆びた門の 錠を探そう

なぜなんだオートバイ

中学時代、浮谷東次郎に出会って、その後、片岡義男『幸せは白いTシャツ』(角川書店)を読み、この憧れを抱えて大人になれば、バイクに乗って日本一周くらいする日が来るのだろうと予想していたというのに、あれあれ…バイクは原付にも乗らず免許も取りに行…

サイレン

彼の日、空に掲げた サイダーの泡をくぐって 四十路という 炎天の下 沈まない 尻を逆立てては 草で拭いた ゴーグルで見た 水底の石それは 流れの中でこそ 美しい 空き缶の中の 黒い雨蛙 子どもの頃に 見たきりだが非常時のように 胸が鳴る まさか今まで 淵に…

Bildungsroman

ビルドゥングスロマン、という言葉を知ったのは、曽野綾子の『太郎物語』を読んだ時だった。しかし、太郎物語の太郎自体は1980年代の中学生から見ると、高校篇でもずいぶん老成しているように感じたから、成長物語とは感じなかったけれど。下村湖人の次郎物…