給食にもドラマあり

グループホームというところは、介護や介助の必要な人をたくさん抱えた家族のようなものだから、一人一人の細かいオーダーを把握するのがちょっとした苦労である。病院や調理場のある施設では、調理師が栄養士の立てた献立を見ながら必要に応じて料理を刻んだりミキサー食やとろみづけを手分けしてやるのだと思うが、今のホームは基本的には一人で10人分を作って、必要に応じて刻んだりペースト状にしたりと手間がかかる。
 松山ルミ『新卒で給食のおばさんになりました その後』(メディアファクトリー)は、調理師学校に通った後、病院の厨房で5年間働いた女性が、仕事や身辺を綴ったコミックエッセイの第二弾。ちょっと絵柄にくせがあり、同僚のおばさんの捉え方がステレオタイプなきらいがあるが、内容が給食の話であるだけにいろいろと身につまされるエピソードが満載である。
 帯にも紹介のある200人分の米をはかり間違うエピソードでは、ご飯をついでいくうちに、あれ、と思った時にはもう遅く、食事直前にご飯の不足が発覚。一度盛ったご飯を少しずつ回収して回ったり、炊いたご飯をスーパーで調達してきてもらって何とか凌いだ様子が描かれている。「あんた慣れて仕事が雑になっとるたい」と先輩調理員にダメだしをくらって、気を抜いて仕事をしてしまったことへの反省を「こうしてたまにはでかい失敗をして初心を忘れないよう働いていこうと思いました」と最終コマで締めているが、こちらもちょうど朝、台所に入って、ご飯がないことに気づき、「うおおー間に合うのかー」と心の中では太字で叫んだばかりである。おかず作りに勤しむ新人を不安に陥れないように早炊きしながら、調達したレトルトご飯をレンジにかけ、なんとか凌ぎ、「入って一番にご飯をみてね」と朝のスタッフに伝えつつ、「レトルト 5パック」と買い物メモにしっかり記したのだった。
 筆者は調理師免許があるということで職場に入ったものの、包丁使いが苦手で調理経験も少なく、バリバリの還暦シスターズに「まずはやってみらんかい」「これ味濃ゆか」「まずか」と叱咤
激励されながら、実地で料理の腕を上げていった。
 二冊目は本人の結婚退職があって、何かハッピーエンドで話が早送りになっているが、是非、一冊目も探して、人に食べさせることへの苦悩と喜びからくるてんやわんやを共感しながら味わいたいものである。
2014.4.18