2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

子浦の海・詩人が眠る地で

堂ヶ島行きのバスは、暫く山道を走っていたが、そのうち、車窓の左手に海が見え、坂を降りて漁村に差しかかった。「次は子浦」というアナウンスを聞いて、文学記念室で観た画像が浮かび、降車ボタンに手が伸びた。狭い道が続き、バスは待避場所に入って対向…

石垣りんさんの「ふるさと」をたずねて 南伊豆図書館で見せていただいた録画番組の中で、石垣りんさんは、澄んだ声で朗読をしていた。 合間のインタビューでアナウンサーが「なぜ、今若い人からも支持を受けているのだと思いますか」と繰り返し尋ねると「そ…

南伊豆 石垣りん文学記念室

静岡で用事を済ませ、帰路の浜松駅で乗換えを待っていた時、ふと思い出したことがあり、引き返して熱海に向かうことにした。 熱海から下田へ。だれもいない車内で駅前のホテルの予約をして、ひたすら眠った後、これまた人影のない駅に着いた。下田は水仙の咲…

映画「海炭市叙景」 くぐもった声が聞こえ、「DON'T WORRY」と字幕は滑っていった。冬の終わりの陽射しだろうか。画面の猫は、おばさんに抱かれ波打つように輝いていた。 この光景は見たことがある。これは絶対あの人だ。登場人物が煙草をのむと、途端に知り…

N

空気のようになるため くもった顔をしてるだけ そういう 仕事なのだから 自らに気づいた 10歳の時から 一人で生きると決め、 なにがしかは食べて それでいいのだ 遠くばかり 見ているうちに あなたは絆を失っている 少ない約束では 物足りない性分 流儀は抱…

重箱

透き通り 食紅のなかに 固められ 果物は 沈む そこにしか 居られない 決めごとなど ないのだけれど 煮溶かせば 疲労ばかり 大きなあぶくとなった 漆の下にぼやけた 喜ぶべき 贄に 心は動かされないが 肌着の冷たさに 気づいたことで 新年のたよりを こころづ…