甘露


今日の月
梅酒の瓶から
つまみあげた拍子に
しずくが
落ちてくるような



ストーブの灯油が
ゆっくり巡る音を
幾夜も聞き
綴じ紐をひっぱり
年少いゆえに
尽きてしまう言葉に
焦れていた



爪の
飢餓線がなくなり
不似合いな
年輪を巻きつけ
古い葉を繁らせ
やわらかなくたびれに
蝕まれても
どこまでいっても中心は
青白い道管の
束のまま
もとよりの地面から
逃れられず



楽園にいても
気づかずにいた
半生を注ぎ
喉を鳴らして
月を啜る