転がらない石を抱えて

半島の突端に
打ち寄せられた
忘れ形見から
蔓は伸びて
梅雨の雲を
招く


足裏の記憶で
道を辿れば
灯台は閉鎖されていた
釣り人の影に
満潮が重なる


寄る辺ないものが
集まる浜を
ベランダから見下ろし
四方八方に
砕ける波を瞼におさめ
ひとよは終わった


テレビではパンダが
笹を手にして
こっちを見ている
山野にあっては
獰猛である筈が
タグをつけた
ぬいぐるみのような
おまえのまなざし


塩気の強すぎる
牡蠣を口にしたせいで
触角は
眠りの帯を
見つけようとして
まるくなる


熱した脣は
何も伝えることなく
半開きのままだ


もうこれ以上は
転がらない石を抱えて