細い将来しか
山峡に描けず
索漠とした
家に生まれ
手にしたものは
本しかなかった


長じては
粘土に彩られたあの街で
地縁もなく
生きていた日々
しゃべれば不興を買う
修羅のせいかつ史
貝のように生きて
ざるのそこで
見つけたのは
あの言葉だったろうか


ながれてゆくには障りがあると
それをかみちぎり
後方へと
放り捨てた
つもりでも
胸をさわれば
しずかな気持ちが
海の砂のように
優しくそこに確かにつもって
しずんでいる