多田千香子さんの新刊

『パリ砂糖菓子の日々 ルコルドンブルーで学んで』(文藝春秋社)の多田千香子さんが『おやつ新報へ、ようこそ。』(エンターブレイン)という新刊を17日に出されることを、多田さんのはてなの日記を通じて知りました。
『パリ砂糖菓子の日々』は題名はかわいらしいのですが、働きマンの目指す第2ステージといった骨太な内容でした。多田千香子さんは、新聞記者を経験されてからパリにお菓子の修行に行かれ、帰国後は京都の町家にアトリエを開かれ、朝日新聞のサイトにコラムも連載されています。(『論より、おやつ』)
『砂糖菓子の日々』の中に出てくるお菓子では、外出先で、ぐずぐずいう友人の子どもに食べさせたら静かになったという「黙らせサブレ」(ディアマン)が印象的でした。ついているレシピが大がかりなので、別のレシピ(書名は忘れましたがグラフ社のもので、シュガークッキーというレシピ名)を見てディアマンを作り、甥や姪に配りましたが・・神通力までは真似できませんでした・・が、シンプルなクッキーの良さを再認識しました。


森村桂さんのエッセイの中に、学生の時、友達の友達が惜しそうにくれた手作りクッキーの味がバターの風味が良くていつまでも忘れられずにいたところ、手元にあった古い本にレシピが載っていて、懐かしいクッキーに再会。当時の夫君が雪男を探しに行くという探検隊の荷物にクッキーを忍ばせたというエピソードが紹介されています。
ついいろいろ混ぜたくなるけれど、シンプルもいいという感慨を書かれていましたが、ディアマンを作った時に「ああ、ほんとにそうだ」と納得しました。
『お菓子とわたし』(角川書店)が今はすぐ出てこないのですが、気になるのは森村さんがクッキーをつくる時に使ったレシピです。『ケーキ百種』か『お菓子百種』とかいう題名だったように記憶しています。
森村桂さんが、後年軽井沢でお店をやられるようになり、ご自分で出されているお菓子の本がありますがこれは世界を飛び回られていたころに書いた文章の世界からはかなり離れたレシピに思われます。初出当時に頻繁に焼かれていたバナナケーキの味などは実際どうだったんだろうと気になります。
なぜか追悼企画などを目にしませんが、森村さんは壮絶な実人生を送った方なので、まだ再現レシピ企画などは難しいのでしょうか。『向田邦子の手料理』のような森村さんの本があれば『天国に一番近い島』世代は絶対に買うでしょう。

そういえば、森村さんも雑誌記者から文筆家になられ、お菓子を生業にされたのでした。お菓子がメルヘンの世界のものではなく、現実に生きていくための杖としてあるものだと森村さんに教えてもらったことを多田さんの本にも感じることができます。 新刊も文章つきなのでしょうか?楽しみです。


後から気づいたら、今月27日は森村さんの命日でした。来年が生誕七十周年だそうです。