2019-01-01から1年間の記事一覧

堀田善衛は何食べた

寝るしなに、堀田善衛『インドで考えたこと』(岩波書店)をぼうっと読んでいた。 二十年前に女友達とインドに行こうとして、タージ・マハルあたりを観光するツアーを旅行社に申し込んだことがある。この『インドで考えたこと』はその時に手にいれた。 結局、…

これはまたなんといふ味

手元にある昭和40年代~50年代の家庭料理の本に、筒井載子の「料理」は数多く登場している。しかし「料理家」としての、筒井載子の人となりを意識したのは、『テレビ料理人列伝』(河村明子著・NHK生活人創書 電子版あり)を読んでからだった。 戦争未亡人の筒…

食べさせるよろこびをつづる

ホテルのビュッフェ式の朝食には、目の前でオムレツを焼いてくれるコーナーが設けられていることがある。自分では、オムレツもどきしかできないけれど、プロが焼いているのを見ると、その手際の良さに目が離せなくなる。 といた玉子をレードルで掬い、油がよ…

コルドンブルーに何がある

テレビ番組「フレンチ・シェフ」で、フランス料理を60年代のアメリカの家庭に広めたジュリア・チャイルド。今年は生誕100年にあたり、この一料理研究家の誕生を祝う記念行事が、この夏、全米各地で盛大に行われた。アメリカ以外での知名度が、どれほどかは分…

愛される時は思うより短い

「クロワッサンで朝食を」は、イルマル・ラーグ監督の母の実際の体験が織り込まれているという。そのせいだろうか、雪深い町で、飲んだくれの元夫に手を焼きながら、寝たきりの母の介護をしているこのエストニア人のアンヌを、なぜかよく知っている気がする…

おじいちゃんの「洋食や」

たいめい軒主人だった茂出木心護の著書『洋食や』(中公文庫 電子版あり)の解説は、詩人の高田敏子が書いている。 「茂出木さんは昭和六年中央区新川に「泰明軒」を開店されて、戦後の二十三年、日本橋に移り「たいめいけん」となった。そのお話をうかがって…

鏡花と旅行笑話

JR大垣駅で電車を待つことがあり、隣接するショッピングモールの書店に寄ると岩波文庫の『鏡花紀行文』(田中励儀編)が目についた。このところ、世間が休みの頃に仕事が立て込むのだが、今年はまとまった代休もとれないようだ。旅に行かれない憂さ晴らしに、…

おばあちゃんの料理が語ること

『さらば富士に立つ影 白井喬二自伝』(六興出版)によれば、作家になる前の白井喬二は、故郷鳥取の友人と、神田錦町に出版社を設立した。そこで、毎日原稿を書き、疲れると窓の外の「松葉屋染物店」の紺のれんを見て目を癒した。この染め物屋に京都からときど…

大統領に捧げたニンジン 

女性シェフ、オルタンス・ラボリが、エリゼ宮のプライベートシェフにスカウトされ、ミッテラン大統領に最初に出したのが、サヴォワ産キャベツとサーモンのファルシだった。「ちりめんキャベツ」と字幕にあったサボイキャベツは、日本でも最近は見ることがあ…