白い花

幼き日
梅は親しいものだった
用水をまたぎ
白い花を探しに行くと
庇の奥でくすぶる弟等も
途端にはしゃぎだすの
だった


鳥は
どこから春を
抱き取り
翼を替えるのか
裏山で一日中
境目を見つめた


幼い手で残した
淡紅色のカリン
ミツマタの黄色
薄紫を見せて俯く
カタクリの花


歳時記など
縁のない
明け暮れだが
歩き出した日の
春の形を
置いてきた
山河草木を
その
匂いも色も
胸の行李を開ければ
いつまでも
忘れはしない