道行



不安を楽器
に鳴らし終え
たまたま
聞きいるひとを得たと
月琴を胸に
ねむるのも忘れるあのものを
呼びとめたりしないこと
なさけあるのなら



たとえ
肩は痛み
足は曲がらず
横画面の夕景に
座らざるを得なくとも



紙のように散らされた
古びたイコンは
首から取り
そのまま生きていくのだ
水を飲み
飯に卵をかけて



音をかき消すほど
言葉をつくしても
出会ってしまう
七夕のひそみ


わからないのは
この世のならい
潮の満ち引きに
われらの意思はない
なるようになれと
眺めているのみ