木霊

一日を終えて
寄り添ってくれる言葉でないのなら
忘れてしまっていいのだろう
今日のなぐさめは
また開かれなかった



熱を帯びた時が
肩に手をかけていたが知らずして
ふらりと降り
いつのはずみか
麦の畑
空豆の畦
夕べに並べて眺めている



見つけたものは永遠ではなかった
人を亡くして
忘れるために夜を与えられた
古代の妹のように
卵の孵る音を聞き
雷鳴に打たれ
糸の口が
見えなくなるまで
かぼそくもその
生をつむぐのだ



金子彰子(かねこしょうこ)詩集『二月十四日』龜鳴屋(かめなくや)刊は 白水社Webのコラムにて、ご紹介いただきました。書影などは龜鳴屋HPまで。
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/