A列車にて


同じ山を目指しながら
べつべつのものを
手に持って揺られている
まだ話はできないでいたけれど



燕の歌が流れると
眉間の皺は解き放たれる
小さな箱を覗きこみ
用意された
情熱のひとつひとつに
出会うごとに
たぎる新緑が増していく



瞼に焼きついた
この瞬間は
遠い地にも熱をつたえていくのだろう

この日
しあわせの雨にうたれた
わたしたち