痕跡の花



ねことまつわりながら暮らした
その軒にはばらがさいた



丈ばかり高かったことは
覚えてはいるが
心を寄せたおぼえがない



丈夫そのものの
肉厚な笑顔の下 棘はならんで
自転車をしまう背を刺した


四つ角のポスターは剥がれ長雨に打たれた初夏も
褪せていった



誰かが
置いていった未練は
時がめぐっては立ちあらわれる
無目的な記念を
祝うかのように



金子彰子(かねこしょうこ)詩集『二月十四日』龜鳴屋(かめなくや)刊、書影などは龜鳴屋HPからどうぞ。
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/