2009-11-29 ■ 蕭々だより一夜を過ごすと 波音のような風が起こり枕辺によせてきた 天井に 高く低く響いた 祖父の音 耳殻から まだ見ぬ海に潜ろうとした幼き日 鉄塔が いきなりそびえ立つ この部屋から 故郷の山間まで かたちのない海の名残は肩を押さえつけ 窓をたたく さきぶれに 地上の虫たちが 手足を悴ませているうちすべてを 褪せた藍色に染めて 扇を広げる早さで 滑らかに渡っていく