蕭々だより

一夜を過ごすと
波音のような風が起こり枕辺によせてきた


天井に
高く低く響いた
祖父の音
耳殻から
まだ見ぬ海に潜ろうとした幼き日


鉄塔が
いきなりそびえ立つ
この部屋から
故郷の山間まで
かたちのない海の名残は肩を押さえつけ
窓をたたく


さきぶれに
地上の虫たちが
手足を悴ませているうちすべてを
褪せた藍色に染めて
扇を広げる早さで
滑らかに渡っていく