桟橋の音


せばめられた家族の距離を地図に落として
遠くから向き合おうとしている
色褪せた一組

暴風で扉は開かない今日は刺身が出ず煮魚だよ蛤は縮んでいる
滋味の出ようのない
新鮮すぎる瞬間を待ってフェリーが出る

目が開けられない圧力に躰のありかを失って
固いイスは60人を載せて出航する
あまりにも頭上が突き抜けているからだろうか
下り際に女達は
口々に明日死んでもいいと女達は噛んでいたたこせんべいにまぎらわして
ここは風を聞く島
ふぃふぉんふぉんと
忘れられた
釣竿が鳴る