は!間違えたと思ったが

職場の近くの本屋に寄って、グレゴリ青山さんの和歌山田舎暮らしの新刊、手芸本棚の画期的な手芸店の紹介本などを眺め、本屋を後にした。 家に帰り着いて、さっき買ったものをと取りだしたら、出てきたのは『大金持ちも驚いた 105円という大金 救われたローン生活』(吉本康永 三五館)だった!あれ!・・今頃せどりの極意みたいな本を買って、もう給料日なのに。
うーむ今回の貧乏クールは綱渡りだったからなぁ、新刊の暮らしの手帖読んだら家計特集で怒られた気がしたし・・とあれこれ思いながら猫村さんタッチの夫婦が描かれた何だか不思議な表紙を眺めると「ヒント満載の、貧乏克服ノンフィクション」と書いてある。
著者は、予備校の講師だとか。せどり以前のつらさの項で、105円棚で自分の書いた本に出会うと、中原中也の「お前は何をしてかたのだと、吹きくる風が私に言う」と思い浮かべると書いている。
このくだりを読むと、数多ある儲け本とは違う感触がする。しかし、ブックオフで自分の著書を見るなんて、なかなかないことだよとあちこち読んでみると、なんと、かつては本を7冊もだした人らしい。なぜか経歴には載せていないが、本の末尾の広告ページに著書の「ぐうぜん東大に合格させる法」が載せてあり、これは見たことがある。最初に出した三万部売れた本とはこれかな?

著者は、たいしてアマゾンを利用した経験もなく、クレジットカードも携帯利用もアマゾンに出品するために契約したとあり、環境がきちんとあって始めたことではないらしい。商品にしても、 最初に売った本は『甦るヴァイユ』で、蔵書がアマゾン向けではないため、群馬、埼玉、栃木、長野、東京のブックオフを巡って出品在庫を確保しているようだ。
せどりの動機は、夫婦併せて500万の年収ながら、アパート購入のローン返済に80パーセントはあてるために、アマゾンから30万稼ぎ出さなくてはいけないという悲壮な決意が原動力になっている様子だか、2008年には月百万を越える売り上げを出しており、快進撃の結末は、著者のためにも買って読んでいただきたい。還暦間近の方をつかまえてなんだが、この本はせどりを通じたビルディングスロマンになっている。
おかしいことに、私も岐阜、愛知、三重、滋賀のブックオフに車を走らせて本を買い歩いていたことがあるらか(せどりではないですが)『売れて印象に残った本』という仕入れ本のレビューを見ると、ああ持ってたけどどうしたっけとかいう、持ってる本とかぶるものもある。中にはブックオフで百円で売った本が結構な値段になっていて驚いてしまう。これもこの本を読む楽しみのうちか。
著者は、教育者だから、自分のせどりの成功を決して商売としては勧めておらず、お金がないことで未来を絶ったり悲観をしないすすめとしてこの本を書いたようだ。
この本をなぜ手にしたかは、偶然としかいいようがないが、最初に受けた実用書然とした印象とは全く違い、随所に織り込まれた家族愛エピソードもいいし、愛書家としての本の情報も多い。これはビジネス書のところに置いとくのはちょっと違う本じゃないかな。