その先に

「逃げられるから別々で」
それきりの別れとなった
父には
息子の命が
大事だった


共に逃れた
母娘
最後に離れた手を思い
母の嘆きは深い


「逃げてくださいと」
危険を告げながら
役場の女性は
津波に流された
最後の声を聞いた母も
今、無事だろうか


東北地方太平洋沖地震
犠牲を覚悟した
数多の死があった


その先に行けと
親の手が
子の声が
背を押し
命を懸けて
人を護った


人々の遺志は
永遠に語られ
受け継がれていくだろう
美談ではなく

危機にありて人は
何を
大切にするかということを