金子は見た!『古本のことしか頭になかった』

今は休刊になっているエルマガジンの「天声善語」の読者であった私は、この連載が書籍にもならず、また再開もされないことをずっと不思議に思っていた。
昨年の12月、自分の詩集を入稿したばかりの頃、手書きの原稿を持ち歩いて、出会う人、出会う人に無理矢理読ませていた時期がある。善行堂でもまた同じことをしたのであるが、その時、善行さんもクリアファイルに入った紙の束を出してきて「これ読んで」と見せて下さったのだった。
一読して驚いたのは、中林洋子や藤澤清造など、今話題になっいる名前が次々と現れてはいるけれど、書かれたのが大変に早いということだ。「これは○年ですね!」「わーこれも○年だ!」とカルタ取りよろしく大声をあげていたところ「サンポマガジンの西川さんが読んでくれててな」と善行師はつぶやいておられ、思えばそれが刊行への道の始まりだったのだろう。 今回、できあがったこの洒落た形で手に収まり、すべてにおいて読みやすい姿からは、その注や装丁などなどにおいての、西川さんと善行さんの半年に及ぶ長い苦労の跡はあまり表には出ていないけれども、プロフェッショナルとは、そういうものなのだろう。
「これはすぐ売れる」と善行堂に通う人々は口々に予言していたけれど、先週の時点で、西川さんのところにももう一箱半の在庫しかないとブログにおしらせが載っていた。まだ手にとられていない方、どうぞあなたもここから本の洗礼を受けていただきたい。そしてもうひとつ、何と佐藤泰志も『古本のことしか頭になかった』に載っているのだが、「天声善語2010」も絶対どこかに載せていただきたい。実は善行堂発、あるいは経由という話題の書が続々と現れているのだから。


『古本のことしか頭になかった』は、はてなの古本ソムリエの日記、或いは大散歩通信社の日記に注文の概要が載っております。