記憶の方法



りんどうが地面から花びらをのばし
山を上った時も
その先を辿るのを
あきらめたあの時も
見送って
伝統に
生きているわけでもない
乾く唇
肩はうっすらと重い


つながっていてもなお
腕をかきいだき
小舟の纜を
ひきもどす 景色
瞼を少しあけて
熱っぽい譫言に
手をいれたのはどちらか
約束の印がいらなくなったのは
いつのことからなのか


西から気圧が変化して
梅雨のかおりも近づいた
隔てのない道は
何処を指して進めばいいか
次の
フライトに我慢できなかったら
消えていく艶のない脈絡を
南向きの窓に
探して眺めよう



金子彰子(かねこしょうこ)詩集『二月十四日』龜鳴屋(かめなくや)刊はこちらからご覧いただけます
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/