四月の雨



紙の花ばかり
求めたがる年頃だろうけれど
そんなに
泣いてばかりなのは
根を忘れているからじゃないのか


三歳の頃
小さなフォルクスワーゲン
かっとして畳に叩きつけた三角に割れた窓を
未だに覚えているなんて
そのせいで
隔てがあったとは
少しも気づかずにいた
遠くにいても
一緒に生きてきたつもりだったんだが


他人の子を慈しみ
他人の親を思いやる
そんな歳月を経てきた
きっと
この世で娘を持てる日々はもうそうは永くない
お前だってそうなんだよ


ほら雨が降っている
今は種をまく季節なのだ
種箱の置いてある
あの店に行って
気にいった二つ三つを
窓辺に埋めておきなさい
難しくしなくていい
大抵水さえやっておけば
心にかなう何かが
きっと
枯れずに育つだろう


金子彰子(かねこしょうこ)詩集『二月十四日』龜鳴屋(かめなくや)刊はこちらからご覧いただけます
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