いきもの


家鴨の池にたたずんで
傷ついた翼の下蛆虫に気づいて追いかけては噛まれ
そうしたことを話してやると
おかしい仮名遣いで
面白がっていた
あなたが書いたものだったろうか


たぶん
あなたの遺伝子は長く
私も負けずに長い
傘にも入らない意地を張りいつも薄着でコートを被せられた
肩の骨を外していても
労れないほど
何かに飢え
尻尾をたてては
電話のない遠くに行ってしまいたがった


電鋸が轟音ながらのどかに響いてる真昼がある


危険をきらって
冒険はできないし
どちらが勝ったかは
まだ分からないのだ


金子彰子(かねこしょうこ)詩集『二月十四日』龜鳴屋(かめなくや)刊は以下から書影をご覧いただけます。
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/