去年の3月23日、私は近くの本屋で購入した『女子の古本屋』(筑摩書房)を読んでいた。この岡崎武志さんの著書を購入したのは、愛読していたエルマガジンの連載「天声善語」の山本善行さんの話にその頃何度も書名が出ていたこと、そして、行ったことのある書店の店主さんが出ていたからであった。
トンカツ屋で読み終え、岡崎さんのブログを検索してみると、ちょうど、もうすぐ深川いっぷく亭で、ポエムショーが始まることが分かった。「もう少し早く読めるとよかった」と暢気に検索していると、だんだん「二月十四日」を朗読していただいているということが分かってきた。
 岡崎さんは、去年の1月18日に「金子彰子はどうしているか」と既に書いて下さっていたのに、当の私は情報が全く入らない状態ということもあり、ブックオフで鍋セットが当たった善行さんに「私はうまい棒でした」などと「岐阜市S」としてのんきに書き込んでいる始末。
その、トンカツ屋でも今から東京に!と焦ってみたり泣き出したり挙動不審を繰り返していたが、古本の神様は私を見捨てなかったとみえる。岡崎さんに感謝を伝えよう!と思いついた私は、善行さんの古本ソムリエのブログに長い伝言を書き込んだのであった。
 そして、その後すぐ、ブックマーク名古屋があり、シマウマ書房のスムーストークに出掛けた。
 トーク終了後、『古本生活読本』(ちくま文庫)にサインをいただきながら、岡崎さんに「あー金子さん、勿体無いよ」と言葉をかけられ、善行さんにも復員兵を迎えるような握手の後、「昔の作品は何もないの?それは集めなさいよ」と助言いただき、自分がまだ詩を書けるんだという可能性にそこで気がついた。
 このブログは、人のブログのコメント欄を使ってばかりに気がひけて、ブックマーク名古屋に出かける名鉄の車中で携帯から開設したのものだったが、第一作目の「五輪の日」をアップしてから何とはなしに詩の発表の場となった。そして、旧作を集めるため、検索をかけたことから「古本 海ねこ」さんにお世話になったが、海ねこさんは、実は『女子の古本屋』に登場されているのである。
 ひとつひとつを結びつけた偶然を、いったいなんと呼んだらいいか分からないが、古本の神様は確かにいるらしい。日常という海の底でやさぐれていた貝のような身に、詩という潜望鏡を差し入れてくれた。だから、今日も懐を痛めながらも、また古本を買いにいくとしようか。

金子彰子詩集『二月十四日』は龜鳴屋刊については以下からご覧いただけます。
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku