水の番

放置する権利/見過ごしの妥当/あたりまえの不自由を与えられて
堤防の穴に手をつっこむ少年の神話を体現しているつもりなのだ
おばさんなのに


溺れまいと
昼間の家を
親も子も預け
妻も働きに行くし
自らも車に閉じ込めているあなたたちよ


仕方ない身ながら
子の親になり
親の嫁になり
妻の姑をやっている


密度の高い愛憎を
見知らぬあなたがたの代わりにどうして
引き受けてきたのだろう


鎖の切れた風呂の栓のように
安寧をまもっている
つもりでいたのだ
もう劣化が始まっているというのに