元旦の災難

山麓の実家は、今や雪にしっかりと抱かれ、日本むかし話の雰囲気だが、実情は、除雪のせいで、正月早々悲惨なコントのような出来事が。
我が父、雪かきは地面が見えるほどやらないと気がすまない性分。街道に出るまでの取りつけ道路を実に几帳面に半日かけて雪をかたづけ、地域の挨拶回りが終わった、軽トラに雪を積んで捨てに行く際に側溝にタイヤがはまった。 きっと一人で何のかんのと試した後だったろうと思うのだが、「ちょっときとくれ」と元気なく母と私を呼びにきた。平穏な正月を乱されていらいらする母、頼みの弟は一家で旅行中ときた。どうみてもこのトリオでは無理なので、携帯でJAFを頼もうとしている間に、焦った父は、ロープで引っ張ろうともう一台の車を出してきたはいいが、何か嫌な予感どおり「あっ」と叫ぶ間もなく、すごい勢いでバックをして、そのまま田んぼに落ちた。
ますます怒り心頭というか、火に油を注いで爆発化する母と己のしたことに茫然とする父に「まあひかれなくてよかったし」と要らんことしか言えない昼行灯の娘。 大雪のせいでJAFは大繁盛で、夜になってから担当者が一人きりで来られた。年配の方が1人とは気の毒なと思ったが、いやいや今のJAFは科学忍者隊に比肩するほど進化が凄い。さっさと30分ほどで落ちた二台を引き戻してくれた。しかし、仕事とはいえ、地元の方である。元旦に呼び出されて愚痴のひとつも出そうなものなのに、「こんに雪が降った日はしょうがないて」と救世主はあくまでも温厚だった。
涙を流さんばかりに感謝する親達。二人は、今年70歳と64歳になるのだった。あまり親の老年を意識せずにここまで来てしまったけれど、そんな暢気に警告を与えられるような、新年一日目であった。
ちなみに車が落ちて、自分で現状復帰が無理な場合は、あれこれせんで、そのままJAFを呼んどくれということだった。確かに後から落ちた方はすぐあがったが、父が何かしたと思われる軽トラはロープをかけ変えながらやっとあがってきたからなぁ…どうぞ父が教訓を忘れませんように。