『すごい本屋』に始まって

去年の年末、『すごい本屋』(井原万見子 朝日新聞出版)を読んで、感銘を受けたことを覚えている。井原さんの営むイハラハートショップは和歌山の、日高郡日高川町という山あいにある本屋さんだという。 都会から遠い地ながら、福音館のエスキース展、今話題の男鹿和雄さんを一早く取り上げられていた『ねずてん』の原画展、絵本作家のサイン会、都築響一さんのトークショーなど興味深いイベントを企画しつつ、普段は本の他に地域の必要のために、日用品やお菓子も商われておられるという。 かつて、メリーゴーランド店主増田喜昭さんの『子どもの本屋全力投球』という本を学生時代に読んで、その時に受けた「本を通じて地域に何かを残したい、子ども達に何か伝えたい」という「何か」への思いが熱い人はどこに住んでいようが「すごい」んだと思ったが、井原さんも明るく本への情熱を広められている。この本の面白さを、昨年末から新年にかけて、人に伝えたりもしたが、結局お店には行かれなかったのだった。
海文堂の先日のトークショーは、イベントの楽しみをテーマとしながらも、ちょうちょちょぼっこさんも10年を迎え貸本は開業日を縮小かお止めになるというお話だったし、カロさんもイベントは今は少ないということと、お金とは無縁のところでやっていたが、これからは作家が続けていくためにも何か仕組みがつくれないかということを考え続けているとどちらもシリアスなお話だった。
その中でちょうちょぼっこの方が、イハラハートショップについて語られる場面があり、やはり話に聞いても魅力的で『ああっ!また行かれないまま28日になってしまった』と気がついた。
 エルマガもなくなり、関西のアートイベント、ブックイベントの盛り上がりをどうしたらいいのだろうという方向で話は深まっていったように思うが、イベントは盛況で、海文堂の福岡店長さんも、25年勤めて来た中でも…と感激の挨拶をされていたが、街の草さんが開店した頃にお勤めになったんだと妙に数字が耳に残った。
イベントの前にはvivo,vaに寄った。『住む』を読んで知ってはいたが、アルネの最終刊を買い、寂しい気持ちになる一方、高山なおみさんの最新刊には新しく家族が増えるとあって、お子さんだったらまた新しい思索と料理が生まれるんだなと期待。
 雑貨のほうには、リサラーソンがずらり。土産ものみたいだが、くるっとしたフォルムのきつねがいい。 ククサが相変わらず取り扱われており、二回ほど買ったことがあるが、愛好者が多いのか。ククサはラップランドで使われている白樺の木で作ったぶこつなカップ である。
 昨日はトンカ書店に二年ぶりに寄ってみた。たくさんの本を階段に並べ、お客さんと対応しながら、他のお仕事の話もして、ネーポンを飲んだと話しかける客にも明るく返事をされ、それが、八面六臂とか気張った表現にしたくないような気配りと気のつきようの店主さんの動き。ささやかに買って帰っていく時も「ばたばたしてましてごめんなさい」と計算しながらも話をされ、このお店の人気の高い理由は行ってみるとよく分かるなぁ。