街の草さん

ふらりと寄って、普通これだけ揃うだろうか。驚いた。おまけに、道を聞いて伺ったとはいえ、飛び込みの面識もない客なのに、あんまりないという貴重な雑誌を申し訳ないほどの価格で分けていただいた。武庫川には初めて出掛けたけれど、駅から坂に沿って、心誘われる飲食店も並び、餅やさん、魚やさん、そして果物屋さんの色彩がたっぷりと溢れ、活気の感じられるところだった。お店は25年前から開いておられるそうだ。街の本屋は長いこと続けることに意味があると感じておられ、この10年を挽回するためにもまだまだもっと続けたいとお話されていた。近所の方が羨ましい。店主の加納さんは最新号の彷書月刊に文を寄せておられ、お店に訪れる「恩籠の時」について書いておられるが、なるほど、いろんな年齢層の人がよく訪れる本屋さんである。この時期なのに戸外で漫画雑誌にかじりつく子ども達、いろんな用で訪れるおじさん、針山を持った婦人など、加納さんは静かな佇まいの方だが、皆がひとしきり語って、「28日までやってるから、またおいで」という言葉を聞いて満足して帰っていくのが、傍から見てて胸の中が暖かくなってくるような風景だった。 私も初めて来たというのに、つい詩を見せたり、ここぞとばかりに探している本を矢継ぎ早に聞いたり、忙しい年末にいつまでも居座ってお邪魔をしてしまった。
 ただ本を買いにいっただけなんですが。
目当てのものを会計してから、しばらくしてまた欲しいものが出てきて、また帰りに一冊と水泳の息継ぎみたいに本が増えていくので、「うちにおったらきりないよ」とご心配を頂いてしまった。
確かに、近くにあったら大変なことになりそうだ。 学生時代、古本屋の裏に住んでたので、暇さえあれば、店に行ってたことをここを訪れて思い出した。