四方から
海からの溜息に包まれ
湯の中から見詰めていた
絶えず呼吸する
こころなしか朱が混じる
港の灯
女は
薄い肩だったろう
男は何を
着せかけてやったか
前髪が絡みあって
二人の前を
昏くした
降り積もる苦いひとひら
胸の扉は潰された
そのかみの情熱が
今
ながめやる荒波の果てで
史実となる不思議
不安定な口笛がたちこめ
女は糸を噛んだろうか
あっさり挫かれた
自分の理
搾り取られた
貝汁に似た情念
未知の恋人逹の魂が
時折の閃光に
よりましを頼んだのか
いつになく
晩餉のことを忘れ
タオルでガラスを
拭いてみたりなぞしている