近江鉄道1999

駅まで
軒がひくいから
背の高さが気になって
肩が並べられなかった
傘も持たない
うかつさも
あの日ばかりは
気にならなかった
けれど


とめどもない
こどものような
熱情を
一度も
とがめられなかったが
一歩ずつ
距離は
空気をはらんで
それが
日常になった


八日市から
草津まで
よそさんの通勤電車に乗って

得意先で
どくだみ茶を
貰ったとか
来年のミレニアムとは
何だったねとか
それだけだったんだけど


そや
そや
と学生が乗り込み
スポーツバッグの海で
ほな
と言った
モーセのような髭面の
まっすぐな肩の線

忘れられないでいる