エバーグリーン

狭いような
世間に居て
いつしか老いの眼鏡を得
内やら外やら眺めれば
千年に一度の事態より
自分の波に
気をとられ
数多の頭が
一様に揺れている



平和は続いてきたと
思いこまされてきたから
家族史に
痛み止めを流しこみ
普通を胸につけて
黄色い帽子を
被って凌いだ
そんな頃を、振り返れば
古傷のような
遺物は
いくらでも見つかろうが
風呂で溺れかけるほど
忙しなく
脂にまみれた
平日の茶の間では
悲しい化石は
ただの石ころだ
完全な愛着関係など
誰が育てられたろうか


天変地異も戦争も
同じ時代に
起きたのだから
手編みの安寧、など
実はざらに
あるものではない


遠い昔の絵本の中で
船長は少年に言った
とびこめ
探してばかりの
草毟りは果てがない
結末を
答えるのは
お前が知っているように
俺の仕事じゃない