君に問う



知っていながら
人を諌められないのは
なぜなのだろうと
後の悔いから思えば
奮い立って言うべき時だっ
たのだと
夜半の声が言う



もうこれよりはと
自らを裁いた
見知らぬ君よ
人とぶつからぬ
その流儀も
命あってこそだったのに
人事も
係累
互いに責めあわなければ
生きてはいけない
そういう仕組みだったのに


報せてやりたいけれども
もう遅い
もう遅い
皆の手が
取り落としてしまったと
慟哭の声


見知らぬ君よ
不幸をひらく水脈が
決壊してすぐ
争いなく
消えてしまうとは
この身は自分のものだと
言い張れなかったことは
あなたのせいではない
しかし
どうして
人の業の
一番の残酷を
尽きぬ後悔の水口を
物言わぬことで
残していったのだろう



薄情な世界に
操をたてた
自然でない真面目さが
胸を刺す



人の親であったのに
子を残し
人の子であったのに
親を残し



あなたの子は
父を忘れ
忘れたことを
一生背負うのだろう
苦しかったら
生きて逃げたらいいのだ
死ぬまで
ひとつの天を眺めろと
そんなことを
誰が君に教えたのだろうか