レシピとは人生の記録

ちょっと前の『あまから手帖』を立ち読みしていたところ、料理人の蔵書拝見という頁があって、和食のお店の方が、城戸崎愛さんの洋食の本を「子どもの頃から大切にしている」と紹介されていました。私もその本を古本屋で求めて持っていたことがあるので、感慨深く記事を読みました。この洋食の本に『レタスのレモンサラダ』というサラダにグラニュー糖をまぜて味をつけるものがあるのですが、城戸崎さんはこのサラダを、おそらく千を越えるほど何回も紹介してきたんじゃないでしょうか。城戸崎さんはご自分のどんな著作でもきちっととっておられるそうなので、いい加減なことは言えませんが、ここ20年くらい気をつけて見ていたところ、ラブおばさんとして爆発的に本を出されてからもこのレタスのレモンサラダはしょっちゅうどこかに顔を出していました。先頃、随筆集のようなレシピ集を出された時に、このサラダは城戸崎さんが海外にいらした頃に夫君からプロバンスの味だと教えてもらった思い出のある味だと書いておられました。「なぜこのサラダをいつも?」という積年の疑問が氷解!レシピって人生だなぁとシャンソンの様なことを思ったり。レタスのレモンサラダは、学生時代、風邪をひいて下宿で寝ていた時に、友人のセイコちゃんがシャレで作ってきてくれたのでした。あれは・・病人にはちょっと難しいテイストだったなぁ。甘いのか苦いのか酸っぱいのか絶句。かなり味覚が開けていないと味わえないのかもしれません。それこそ酸いも甘いも噛みわけた大人が味わう一皿なんでしょうね。