Xiao Louciou  小琉球

 エンジンはわめき
 ブーゲンビリアの岸辺は遠い
 輪行袋に靠れて 芙美子を取り出す


 台風を追い風にして
 越南の高原を思う
 泡沫紅茶の氷が
 全部溶けだした
 14:30分発の便


 女は小さく死んでいく
 雨にいろどられ
 男の狡猾を
 無に帰するほど


 皺深い人群れは
 声音もなく 陽光の向こうに立ち
 白沙Dockに目を凝らし
 潮路を
 決して振り返りはしない